Yチェアのペーパーコード張り替え費用と時期は?寿命を延ばすメンテナンス完全ガイド【2025年版】

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「購入してから10年以上、毎日座ってきたYチェア。最近、座面が沈み込んできた気がする……」

「子供がジュースをこぼしてシミになってしまった。これって張り替えなきゃダメ?」

ハンス J. ウェグナーの名作、CH24(通称Yチェア)。その美しいシルエットと、包み込まれるような座り心地の要(かなめ)となっているのが、職人の手によって編み込まれた「ペーパーコード」です。

Yチェアのフレーム(木部)は、適切なケアをすれば50年、100年と使い続けられる耐久性を持っていますが、座面のペーパーコードは「消耗品」です。いつかは必ず張り替えの時期が訪れます。

しかし、いざ張り替えようと思うと、多くの疑問が浮かぶはずです。

  • 「正規ディーラーに頼むと高いの?」
  • 「街の家具修理屋さんでも大丈夫?」
  • 「そもそも、どの程度傷んだら張り替えるべき?」

この記事では、北欧家具のメンテナンスに精通した筆者が、Yチェアのペーパーコード張り替えに関する「費用」「時期」「依頼先の選び方」を徹底解説します。さらに、張り替えサイクルを少しでも長くするための日常のお手入れ方法まで網羅しました。

この記事を読めば、あなたの大切なYチェアを、最も賢く、そして最も長く愛用するための最適解が見つかります。


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1. Yチェアのペーパーコード、張り替えの「時期」と「サイン」

まず、「いつ張り替えるべきか」という疑問にお答えします。明確な基準を知っておくことで、無駄な出費を抑えたり、逆にフレームを傷める前に手当てをすることが可能になります。

一般的な寿命は「10年〜15年」

カール・ハンセン&サンの公式見解や、一般的な家具修理の現場では、Yチェアのペーパーコードの寿命は10年〜15年と言われています。

もちろん、これは使用頻度や環境によって大きく異なります。

  • 1人暮らしで夜だけ座る場合: 15年〜20年持つことも珍しくありません。
  • 4人家族のダイニングで毎日使う場合: 10年〜12年程度で緩みが気になることが多いでしょう。

ペーパーコードは3本の紙縒(こより)をねじり合わせたもので、非常に丈夫ですが、長年の荷重によって徐々に伸びていきます。

見逃してはいけない3つの「張り替えサイン」

年数だけでなく、椅子の状態を見て判断することが重要です。以下の3つの症状が出ていたら、張り替えの検討を始めてください。

① 座面が沈み、下のバー(貫)に触れそうになっている

これが最もわかりやすいサインです。Yチェアの座面の下には、前脚と後脚をつなぐ「貫(ぬき)」という木のバーがあります。

新品の状態では座面と貫の間には十分な空間がありますが、コードが伸びてくると、座った時にお尻が貫に当たりそうになります。

【危険信号】

座面が貫に接触してしまうと、ペーパーコードが木部と擦れて断裂する原因になります。また、座り心地が悪くなるだけでなく、無理な力がフレームにかかり、本体の歪みを招く恐れがあります。

② コードの一部が切れている(断裂)

1本でも切れてしまったら、残念ながら寿命です。ペーパーコードは一本の長い紐で編み込まれているため(実際には数本を継いでいますが)、一箇所が切れると全体の張力が失われ、連鎖的にほつれていきます。

そのまま座り続けると転倒の危険もあるため、早急な修理が必要です。

③ 全体的な変色や臭い、汚れが著しい

機能的には座れても、長年の手垢や食べこぼしによる黒ずみ、カビの発生、あるいはペットの粗相などが染み付いている場合は、衛生面を考えて張り替えをおすすめします。ペーパーコードは紙製品のため、丸洗いはできません。


2. 徹底比較!張り替えにかかる「費用」と「期間」

Yチェアの張り替えを検討する際、最も気になるのが費用です。依頼先は大きく分けて「正規メーカー(カール・ハンセン&サン)」「家具修理専門店(一般業者)」の2つがあります。

それぞれの費用相場とメリット・デメリットを比較しました。

費用・期間比較テーブル(2025年目安)

項目正規メーカー修理(カール・ハンセン&サン)一般の家具修理専門店
張り替え費用(1脚)約23,000円 〜 28,000円約13,000円 〜 18,000円
往復送料(目安)5,000円 〜 8,000円3,000円 〜 6,000円(持ち込み可の場合あり)
合計コスト目安約30,000円 〜 35,000円約16,000円 〜 24,000円
納期(期間)3週間 〜 1.5ヶ月2週間 〜 1ヶ月
仕上がり品質★★★★★(新品同様・純正コード)★★★★☆(職人の腕による)
資産価値維持される業者によっては下がるとみなされる場合も

※価格は全て税込の目安です。地域やコードの種類(ナチュラル/ブラック)によって変動します。

※Yチェアは梱包サイズが大きくなるため、送料が意外と高額になります。

正規メーカー(カール・ハンセン&サンジャパン)に依頼する場合

正規店で購入した場合や、将来的にヴィンテージとしての価値を維持したい場合は、メーカー修理が確実です。

正規メーカー カール・ハンセン&サンジャパン

  • メリット:
    • 純正のペーパーコードを使用: 色味や質感が完全に元通りになります。
    • 熟練の技術: 専任の職人が、新品製造時と同じテンション(張り具合)で仕上げます。
    • フレームのチェック: 張り替え時にフレームのぐらつきや割れがあれば、追加費用で補修提案をしてくれることがあります。
  • デメリット:
    • 費用が高め。
    • 納期が比較的長い。

家具修理専門店に依頼する場合

「とにかく安く済ませたい」「近所に持ち込めるお店がある」という場合は、専門店の利用が賢い選択です。

  • メリット:
    • コストパフォーマンス: メーカー修理の6〜7割程度の費用で済みます。
    • 納期が早い: 空いていれば1週間程度で戻ってくることも。
    • 柔軟な対応: 「少し緩めに編んでほしい」「国産の撥水コードを使ってほしい」などの細かい要望が通る場合があります。
  • デメリット:
    • コードの質感が違う可能性: 純正品とは異なるメーカーのペーパーコードが使われることがあり、微妙に色味や太さが変わることがあります。
    • 技術のばらつき: お店によって仕上がりの美しさ(網目の均一さ)に差が出ます。施工事例をWebサイトでしっかり確認する必要があります。

3. あなたに最適な解決策は?3つの選択肢を提案

費用と期間がわかったところで、具体的にどう動くべきか、3つのパターンで解決策を提案します。

解決策①:長く使い、資産価値を守るなら「正規修理」一択

もしあなたが、「このYチェアを子供の代まで受け継ぎたい」「将来手放すときに高く売りたい」と考えているなら、迷わずカール・ハンセン&サンの正規サポートに申し込みましょう。

Yチェアは中古市場でも非常に人気がありますが、「正規店でのメンテナンス履歴」は査定においてプラス材料になります。数千円〜1万円の差を惜しんで非純正の材料を使ってしまうと、オリジナルの価値を損なう可能性があります。

【手順】

  1. 購入した店舗、またはカール・ハンセン&サンの公式サイトから修理申し込みを行う。
  2. 指定された方法で梱包し、発送する。

解決策②:コスパ重視・日常使いなら「修理専門店」がベスト

「子供が小さいからまたすぐに汚すかも」「実用として座れれば十分」という方は、実績のある家具修理専門店がおすすめです。

特に、「椅子張り技能士*の資格を持つ職人がいるお店や、北欧家具の修理実績をブログやSNSで公開しているお店を選びましょう。最近では、宅配便で全国対応している優良な修理店も増えています。

【選び方のコツ】

  • 「Yチェア 張り替え 実績」で画像検索し、網目の美しさをチェックする。
  • 見積もりに「往復送料」が含まれているか必ず確認する。

解決策③:DIYでの張り替えは「おすすめしない」理由

YouTubeなどで「Yチェアの張り替え方」という動画を見かけるため、「自分でやれば材料費(5,000円程度)だけで済むのでは?」と考える方もいるでしょう。しかし、専門家としてこれは推奨しません

【DIYをおすすめしない理由】

  1. テンション(張力)の維持が困難: Yチェアの座り心地は、強烈な力でコードを引っ張りながら編むことで生まれます。素人の力ではどうしても緩くなりやすく、数ヶ月でまたダルダルになってしまうことが多いです。
  2. フレームの歪み: 力の入れ方が均一でないと、左右のバランスが崩れ、椅子のフレーム自体を歪ませてしまうリスクがあります。
  3. カノコ編みの複雑さ: Yチェアの座面は「カノコ編み」という特殊な編み方です。見た目を綺麗に整えるのは至難の業です。

失敗して結局プロに頼むことになれば、材料費と時間が無駄になります。プロの技術にお金を払う価値は十分にあります。


4. 寿命を延ばす!プロ直伝の日常メンテナンス

張り替えた後の美しい状態をできるだけ長く保つために、今日からできるメンテナンス方法をご紹介します。

基本は「掃除機」と「乾拭き」

ペーパーコードは隙間にホコリが溜まりやすい構造です。ホコリが溜まると、そこが湿気を吸い、ダニやカビの原因になります。

  • 週に一度、掃除機のブラシノズルを使って編み目の間のホコリを吸い取ってください。
  • 表面は柔らかい布で乾拭きします。摩擦に弱いので、ゴシゴシ擦るのはNGです。

液体をこぼした時の対処法

ペーパーコードは防汚加工がされていますが、紙なので水分は大敵です。

  1. すぐに拭き取る: 乾いた布やティッシュで、叩くようにして水分を吸い取ります。擦ると汚れが繊維の奥に入り込みます。
  2. 固く絞った布で叩く: 濡れた布を極限まで固く絞り、残った汚れをトントンと叩き出します。
  3. 完全に乾燥させる: 風通しの良い日陰で、完全に乾くまで座らないでください。生乾きで使用するとコードが伸びてしまいます。

ソープフィニッシュ(石鹸水)によるクリーニングは慎重に

よく「ソープフィニッシュで洗える」という情報がありますが、これは木部の話です。ペーパーコード部分を無闇に濡らすのは避けましょう。

どうしても全体的な汚れが気になる場合は、無添加の石鹸素地を泡立て、その「泡だけ」をスポンジに取り、表面を撫でるように洗い、すぐに乾いた布で泡を拭き取る方法があります。しかし、これもリスクがあるため、基本的にはプロに任せるのが無難です。

シートクッションの活用

最も確実な保護方法は、Yチェア専用のシートクッション(座布団)を使用することです。

特に小さなお子様がいる家庭や、デニムなど色移りしやすい服をよく着る方は、クッションを敷くことでペーパーコードの寿命を飛躍的に延ばせます。純正品以外にも、Yチェアの座面形状に合わせた革製・布製のクッションが多く販売されています。


5. 実践例:私が実際に相談を受けたケーススタディ

ここでは、私が過去にアドバイスをした3つの具体的なケースをご紹介します。ご自身の状況に近いものを参考にしてください。

ケースA:20年愛用したヴィンテージ(50代女性)

  • 状態: 20年前に購入。座面は完全に茶色く変色し、かなり緩んでいるが切れてはいない。木部は良い感じに飴色に変化。
  • 選択: 正規メーカー修理
  • 結果: 「木部の経年変化と、新品の真っ白なコードのコントラストを楽しみたい」とのことで正規修理へ。戻ってきた椅子は、新品には出せない風格を纏っており、さらに20年使える強度を取り戻しました。費用は約3.5万円かかりましたが、「買い換えるよりずっと愛着が湧く」と満足されました。

ケースB:中古で購入したが汚れていた(30代男性)

  • 状態: リサイクルショップで格安で入手。座面に大きなコーヒーのシミがあった。
  • 選択: 修理専門店での張り替え
  • 結果: 本体を安く買えたので、修理費も抑えたいとの要望。地元の修理工房に持ち込み、約1.6万円で張り替え完了。純正ではありませんが、国産の高品質なペーパーコードを使用してもらい、見た目の違和感はゼロ。清潔な状態で新生活をスタートできました。

ケースC:猫が爪とぎをしてしまった(40代夫婦)

  • 状態: 飼い猫が爪を研いでしまい、数カ所が毛羽立ち、1本切れかけている。
  • 選択: 修理専門店 + シートクッション
  • 結果: 猫がいる限りまたやられる可能性が高いため、正規修理ではなく、比較的安価な専門店で張り替え。同時に、厚手のレザークッションを購入し、普段はそれを敷いてガードすることに。「猫との共存には妥協も必要」という賢い選択です。

6. よくある質問(FAQ)

最後に、Yチェアの張り替えに関してよく寄せられる質問をまとめました。

Q1. 張り替えの間、代わりの椅子は借りられますか?

A. 基本的にメーカーや多くの修理店では代替品の貸出は行っていません。張り替え期間(2週間〜1ヶ月強)は、家にある別の椅子やスツールで代用する必要があります。計画的に一脚ずつ出すか、旅行などの長期不在に合わせて出すのがおすすめです。

Q2. ペーパーコードの色を「ナチュラル」から「ブラック」に変えられますか?

A. はい、可能です。雰囲気をガラッと変えたい場合、張り替えのタイミングで色を変更するのは人気のリメイク方法です。ただし、ブラックペーパーコードはナチュラルよりも材料費が若干高い場合が多く、追加料金がかかることがあります。

Q3. 緩んできたけど、まだ切れていません。自分で締め直せませんか?

A. 残念ながら、一度伸びてしまったペーパーコードを後から締め直すことは構造上不可能です。緩みが気になり、座り心地に影響が出ているなら、張り替えしか方法はありません。


まとめ:Yチェアの張り替えは「新たな20年」への投資

Yチェアのペーパーコード張り替えについて解説してきました。

  • 張り替え時期: 10年〜15年、または「座面の緩み」「断裂」が見られた時。
  • 費用感: 正規なら約3万円〜、専門店なら約1.6万円〜(送料込目安)。
  • 選び方: 資産価値重視なら「正規」、コスパ重視なら「専門店」。DIYは非推奨。

張り替え費用を「高い」と感じるかもしれません。しかし、3万円で修理してまた15年使えると考えれば、1日あたりのコストは約5.5円です。

Yチェアは、使い捨ての家具ではありません。座面を張り替え、木部をケアし、親から子へと受け継ぐことができる「家族のような家具」です。

座面が綺麗に張り替えられたYチェアが戻ってきた日、そのピンと張った美しい座面に腰掛けた瞬間、あなたは「修理してよかった」と心から思うはずです。

まずは、お近くの取扱店や修理店に見積もりを取ることから始めてみてはいかがでしょうか。それが、あなたとYチェアの新しい物語の始まりです。


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